体験記(4)

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隻眼での硝子体手術 浅野T
 平成14年7月にアイケア名古屋で、残る左眼(右眼は失明)の白内障手術をして頂き、白内障は完治したのですが、眼内の持病「黄斑上膜」の病状がよく判るようになりました。

 黄斑上膜とは網膜の前に薄いセロファンのような膜がはり、初期には軽い視力低下と変視をきたし、徐々にその程度が強くなる症状です。白内障の手術後、新聞は読めるし視力は0.5ほどあって、仕事を離れている私にとっては日常の生活に不便は無かったので、これで良いと思っていたのですが、院長の安藤文隆先生は、今年「このままにしておくと、さらに悪くなりますし、もう少し見えるようにしましょう」と、硝子体手術を勧めて下さいました。

 私は少なからずあわてました。
観血手術は結局良い方の眼の補助的な役割しか果たせない眼になってしまうと思っていましたし、硝子体手術をすると、網膜を支える物が無くなるので、綱膜が落下傘のようにフワッと剥がれる場合があり、その時はガスを入れて復位し、3ヶ月くらいしてガスを抜くこともあるそうです。

 特に片目での黄斑部の硝子体手術は万が一もあるので、手術はして頂けないものと思っていました。大学病院は厄介な患者でも、医者を育てる所ですから、もしかしたら手術してくれるかも知れませんが、私立の病院では自信の無い場合は手術してくれないのが普通だと思います。安藤先生は「3月中にやりましょう」と言って下さいました。

 国立名古屋病院で定年を迎えられ、開業されるまで幾つもの公的病院で数えきれない程の難しい手術をされた網膜硝子体疾患の権威である先生が手術して下さるというのに、機会を逸しては後悔すると思い、私は決心して手術をして頂くことにしました。

 4月、5月には息子と甥の結婚式を控えていたので、手術は5月末に予約しました、住まいとの距離の関係で手術日前日の午後入院し、4泊5日の日程です。この病院は最長で月曜日入院、金曜日退院のシステムです。入院前に向かいのビルにある内科病院で胸部レントゲン、心電図、血液検査、身体測定等を済ませ、手術日を迎えました。

 手術の様子は入院患者の待合室のモニターで、付き添いの人が見ることもできます。また、有料ですがビデオも分けてもらえます。
先生は難しい手術ではないと言われますが、ビデオで見ると熟練を要する大変な手術だと思いました。手術は局部麻酔をした術眼の左右3ヶ所にメス、ハサミ等が入れられる穴、ホースの固定される穴等が開けられます。散瞳された瞳の上に透明なカバーが装着されると手術開始です。

 ビデオでは赤く見える部分が多いのですが、眼の中から見ると赤色はありません。ブルー、グリーン、紫色それに白色です。それと飛蚊症の黒等です。両眼が見える場合は手術されている眼では見る意欲は無いのですが、片目の場合は術眼で見るしかないので、手術の様子を見ている訳です。

 まず眼内の不要な物全てがジョキジョキとカットされ、摘出されます。壁面の付着物もきれいに剥がされて、どんどん吸い出されて行くようです。
圧巻は眼内に巣くって悩まされていた飛蚊症が吸引されていく様子です。とぐろを巻いていた黒いやっが、蛇のようにスルスルと解けて出ていきました。マンボウの形をした薄い色のフワフワしたのもサヨナラです。

 そして最後に、時々現れて飛び回り、網膜剥離再発かと心配させた「マイナス記号」のようなやつは、やはり前後左右に逃げ回りましたが、吸引ノズルにおいかけられて、ついに御用と相成りました。これで飛蚊症は皆無となりさっぱりしました。

 さて、いよいよ黄斑上膜を削る段階のようです。眼の中になだらかな薄いグリーンの丘が見えるとその上をメスが滑るように何度も左右に動くと、大工の名人がかけるカンナのように薄い薄い削り屑が一所に集められては吸引されて取り除かれます。

 この時点でこれは手術を受けている患者だけが見ることのできる映像であり、現実には見ることのできない美しい抽象的アートの世界だと思いました。それに、このオペ室には静かに音楽が流れているのです。特別製のベッドの上で自分だけが鑑賞できる映像です。とはいえ、終り近くには脈拍と血圧は異常値にあったようです。

 1時間余の手術でしたが、体の方は緊張でまいっていたと思います。結果から見れば心配する必要は無かったのですが。
病室では看護婦さんの手厚い看護で快適でした。術後は全てがピンクがかって見えていました。白い部分も勿論ピンクです。白内障手術後でもピンク色に見えていました。両眼が見える人で手術された人にピンクに見えたか聞いてもピンとこないようでした。片目で手術した人に出会ったら、確かめてみたいと思います。ピンク色がだんだん薄れて来ると同時に快方に向かいました。現在、術後2ヶ月経ちました。

 削られた患部の腫れも退いて大変良い状態です。近くの視力は術前より格段に良くなり、遠方も改善されそうです。白色がこんなに白く、黒色がこんなにも深い黒であるのを忘れていました。

 何が幸せかといって、後が無い病気の時にタイミング良く名医に出会えるほどの幸せは無いと思います。私は3度その機会に恵まれました。28年前に丁寧に光凝固治療をして頂いた先生、白内障手術をして下さったアイケア名古屋の笹野先生。それから、網膜剥離友の会の東海懇話会で存じ上げていた安藤先生です。

 私と同じ片目の状態で、恵まれない方がいらっしゃるかもしれません。もしやお役に立つかもしれないと思いまして手記をしたためた次第です。

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