「全身病と目の関係A」3

ホーム お知らせ 何って? Q&A 講演録 協力医訪問

3. 高血圧と眼
 高血圧も日本人に非常に多いのですが、高血圧が長く続くと、動脈硬化を起こして血管が固くなってきます。そうなると、色々な病気を引き起こします。ただ、最近は血圧を測る機械が普及して、患者さん自身で血圧が高いということを容易に知ることが出来ますので、早めに受診される方が増えてきました。それで、昔に比べれば、重症の高血圧性網膜症の患者さんは減ってきています。

 糖尿病は血糖値を測らないと分からないのですが、血圧は容易に測れるようになったので、早めに受診する方が増えてきた点が、糖尿病と大きな違いで、非常に良いことです。

 高血圧も悪くなると高血圧性網膜症が起こってきます。これは糖尿病とよく似ていて、軟性白斑、眼底出血、硬性白斑が起こって来て非常に悪くなります。

 眼底写真Iは本態性高血圧の方で、血圧が200mmHg以上で、高い血圧を放置していたために高血圧性網膜症が生じています。

 動脈硬化が起こるとどうなるかと言いますと、網膜の中の血管は動脈と静脈が交叉する場所がたくさんあって、その交叉する部分の動脈が静脈を圧迫して、血が戻れなくなり、静脈が破れます。これを網膜静脈分枝閉塞症と言い非常に多い病気です。

 網膜静脈閉塞症は、視神経乳頭内の根幹の部分でも生じます。ここで静脈の圧迫が起きますと、写真Jのように眼底全体に大きな出血が生じます。

 眼の動脈が詰まることもあり、網膜動脈閉塞症といいます。網膜静脈閉塞症のように出血はあまり起こらないのですが、網膜に浮腫が生じて白濁します。

 これは非常に予後の悪い病気です。脳の動脈が詰まって血が流れなくなると脳梗塞になりますが、それが眼で起こった病気です。

 この病気では、急激に眼が見えなくなるのが特徴です。患者さんの中には、何時何分に暗くなったとおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。この病気に対する治療は、脳梗塞と同じように一刻を争います。

 脳梗塞が起きますと、意識を失って倒れてしまったりしますので、さすがに周りの方も気づかれて、早めに病院で治療を受けられることが多いと思いますが、眼の場合には倒れたりすることはありませんので、ついつい受診が遅れます。

 本人も片方が見えなくなっていても、変だなという程度で、翌日、時には1週間もたってから、診察を受けに来られる方が結構います。

 網膜の神経細胞は完全に血が詰まると90分で死滅してしまうと言われますので、症状が出てすぐに眼科を受診しても助からないことが多く、治療が遅れますとまず治りません。

 まれに、不完全閉塞で、ちょろちょろ血が流れている場合があって、助かる方もいますが、大半の方は視力障害が永続します。

 網膜の動脈に、コブが出来る網膜動脈瘤という病気になることもあります。脳の動脈にコブが出来て、それが破裂すると、くも膜下出血になりますが、眼の場合には、出血が起こって黄斑部に掛かってしまうと、見えなくなってしまいます。

 早期に手術すると助かる場合もあります。あるいは出血が自然に引いてくる場合もあるのですが、黄斑部に出血が達すると、視力が戻らない場合も多いのが実状です。こうした高血圧や動脈硬化に関連する眼疾患の場合には、前に申し上げたようにメタボリック症候群を合併していることも多く、その総合的な治療が必要です。

 眼科的には、止血剤や循環改善剤を内服してもらったり、必要に応じてレーザー光凝固をします。

 網膜静脈閉塞症が黄斑浮腫をきたした場合には、糖尿病黄斑浮腫のように抗VEGF療法を行うこともあります。大きな出血が起こった場合、硝子体手術をする場合もあります。
4. 内分泌疾患と眼
 バセドウ病という名前を聞かられことがあるかと思います。バセドウ病は、甲状腺機能⊥几進をきたす代表的な病気で、この病気の方には、眼が突出してくる甲状腺眼症が起こります。大阪医科大学眼科には、この病気の専門家で神経眼科の菅澤教授と奥准教授がいらっしゃいますので、多くの患者さんが来院されます。

 甲状腺眼症にかかりますと、眼球が突出してきます。病気にかかっていない方は、眼の黒目の左右の白目は見えますが、上下の白目の部分は見えません。ところが、この病気の方は、眼が突出してきて黒目の上下の白い部分が見えるので、この病気だとすぐわかります。なぜ、眼が突出してくるかと言いますと、眼の後ろにある脂肪組織が炎症を起こして容積が増えますので、眼球がどんどん前に押されて、突出することになります。

 あるいは、眼の周りの筋肉が肥厚して炎症を起こして眼が動かなくなるといったことを起こすこともあります。こうなりますと、物が二つに見えるということが起こってきたりします。

 こういった場合には、MRIを撮ってみます。そうすると眼の後ろに脂肪組織が肥厚しているのが分かり、筋肉が肥大しているのが画像で分かります。

 この病気には、入院して、ステロイドパルス療法という治療を受けて頂くことが多く、炎症を抑えると、かなりよくなります。ただ、再発することがよくありますので、必要に応じて放射線療法や手術療法を行うこともあります。
5. アレルギー・膠原病・免疫異常と眼
 アレルギーは日本人に非常に多く、アレルギー性結膜炎やアレルギー性眼瞼炎といった病気になる方が多いです。更に結膜炎が重症化した春季カタルといった疾患になる方もいます。

 この病気では、上瞼をひっくり返しますと、石垣みたいなボコボコしたものが見えます。これを巨大乳頭と言うのですが、この石垣みたいなものが、眼を閉じたり開いたりするたびに角膜を擦りますので、角膜にいっぱい傷がついて、患者さんは非常に痛がられて、涙がぽろぽろ出るという方もいます。

 アレルギー性結膜炎の患者さんには、一般的には非ステロイド系抗炎症剤という目薬を処方します。重症の方には、ステロイド、場合によっては免疫抑制剤の点眼を処方します。

 膠原病という一連の病気があって、これも眼症状を伴うことが多くあります。その代表が慢性関節リウマチで、症状はドライアイ(眼が乾く、涙が出ない)です。また強膜炎や角膜潰瘍が起こることもあります。

 リウマチ以外にもシェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)など免疫機能の異常が原因で起こる病気でもドライアイが生じることがあります。

 リウマチの方の角膜をフルオレセインという色素で染めるのですが、黄色く染まっていて、角膜の上皮が傷んでいるのがよく分かります。コンタクトレンズを装着されている方が、眼が痛いと言われるので、調べると、これと同じような角膜上皮が傷んでいる所見が見られます。

 ドライアイの治療は頻繁に人工涙液をさしてもらうのですが、なかなか治らないこともあります。SLEではSLE網膜症といって眼底に軟性白斑や出血をきたす場合もあります。

 ブドウ膜炎という名前を聞かれた方もあると思います。ブドウ膜というのは眼球の内側にある脈絡膜(みゃくらくまく)と毛様体(もうようたい)、虹彩(こうさい)の3つをまとめて呼ぶ総称ですが、ブドウ膜炎は、このブドウ膜に炎症を起こす病気です。サルコイドーシスとべーチェット病、それと原田病を加えて三大ブドウ膜炎といいます。

 サルコイドーシスでは虹彩炎や眼底の網脈絡膜炎、硝子体混濁など多彩な症状が生じてきます。治療としては、基本的にはステロイドを投与しますが、眼の中が濁って見えなくなってきたときは、硝子体手術をする場合もあります。べーチェット病もブドウ膜炎の代表的な疾患ですが、眼所見としては前房蓄膿と網膜血管炎が主体です。

 写真Kはべーチェット病の方の蛍光眼底写真です。網膜血管から蛍光色素がシダ状に漏出しています。

 べーチェット病はシルクロードに沿った地域に多いので、シルクロード病と言われることがあります。日本では北海道に多いのですが、勿論大阪にも患者さんはいます。

 ただ日本全体で最近べーチェット病は減ってきていると言われています。昔はべーチェット病で失明される方が沢山いましたが、最近では抗TNFα抗体という画期的な薬が出てきたので、失明される方は減ってきています。

 こうした抗TNFα抗体のような薬は、生物学的製剤、分子標的薬剤と言いますが、薬が作用する部位のターゲットを絞って強力に効く薬です。ガンの治療にもこうした薬がいろいろ出てきています。こうした新しい薬で治療成績が上がってきたのは、医学の素晴らしい進歩だと思います。

NEXT  BACK  TOP


Copyright(C) 2017-2018 網膜剥離って何? All rights reserved.