知っておくべき眼疾患2

ホーム お知らせ 何って? Q&A 講演録 協力医訪問

【糖尿病網膜症について】
@その実態

 2番目の失明原因である糖尿病網膜症は、今、740万人ですが、900万人を突破するような勢いでどんどん増えてきています。糖尿病の網膜症の頻度としては、10年間で約半数の方に糖尿病の網膜症が出ていて、20年経つと30%ぐらいの方が増殖型になっていると言われています。年間に3千人ぐらいの方が視力に障害が出て、視力の障害手帳を取得する原因となっています。
A発生機序

 高血糖によって網膜の細い血管が少しずつ障害を受けて変形することで、酸素が行き渡らなくなり網膜が酸欠状態に至るという病気です。

 点滴を腕のところから造影剤(眼の中の血管がはっきり分かる)を点滴して撮った写真ですが、太い血管がはっきり写っています。太い血管の間にも細い血管が網状にあるはずですが、この辺などは全部潰れてしまい、黒く抜けている状態です。

 血が行かなくなった網膜から血管内皮増殖因子(VEGF)というものを主とした色々な物がどんどん作られて、それが血管の透過性、血管を脆くして中から汁が染み出るような状態にしたり、悪い血管、弱い血管を生やすようなことを起こしてきます。簡単に言うと、糖尿病の網膜症はこの三つに分類されます。

 ごく初期にある単純網膜症、そしてだんだん悪くなって増殖前網膜症になり、悪い血管が生えてくると増殖網膜症になります。

 単純網膜症は一見わかりません。自覚症状も全くありません。この時は可逆性と言って血糖のコントロールが良くなったら、良くなってしまうこともあります。血管の瘤だけがあるという状態です。

 それがだんだん悪くなってくると、血管が詰まり、網膜のところに血が行かなくなって網膜が腫れてきます。そして白いものが出たり、赤いものが出たりします。そうなると徐々に見難いなと感じる方も出てきます。

 こうなると血糖のコントロールだけではなかなか改善しなくて、血が行かなくなったところがどんどんサイトカイン(Cytokine:細胞が生産する微量生理活性タンパク質の総称)を出して網膜症は悪くなっていきます。そこの視細胞を焼き潰すレーザー治療が必要になることもあります。

 そしてもっと悪くなると悪い血管が生えてきて、それが破れると血が出たり、増殖膜という膜ができて、網膜剥離を起こしてくることもあります。こうなってくると、もう血糖値を良くしても進行して行きますから、手術が必要になってきます。
B治療方法

 症状により、次のような治療を行います。

●単純網膜症  血糖コントロール
●増殖前網膜症  レーザー光凝固
●増殖網膜症  レーザー光凝固
C硝子体手術

 レーザー光線というのは、酸素を最も使っている視細胞というところをレーザー光線で破壊することで、酸素があまり行かなくても眼が生きていけるような状態にもっていく治療です。

 これが一番の治療の基本なのですが、やはり視細胞を潰しますので、暗いところでちょっと見難くなるとか、視野が狭くなるというような作用が出てくることもあります。

 それでも治まらなくて変な膜が生えてきたり、中に出血したりすると、眼の中に、今は25ゲージといって、細い針のストローのような先にカッターが付いているもので眼の中の出血やゼリー状の硝子体を取ったり、増殖膜を処理する手術を行います。

 レーザー光線の技術や硝子体手術の器具などが非常に良くなったために、糖尿病の網膜症手術は成績が良くなって、酷い網膜症の方も適切な時期に手術を受ければ、きれいな網膜の状態に戻って、視力もある程度維持できるというところまでもって来られるようになりました。
D手術成績

 手術の成績は改善が80%、不変10%。網膜症手術をしてもどんどん悪くなってしまう方もいますので、悪化する症例が10%という状態です。増殖糖尿病の網膜症に関しては内科の先生方が頑張って眼科に紹介してくださる。そして色々なところで啓蒙活動が行われて、患者さんが眼科を受診することが増えたので、全く見えなくなるという方が確かに減っています。
E糖尿病黄斑症

 代わりに問題になって来ているのが黄斑症という病気です。黄斑部というのはものを見る神経の中心のところですが、そこに障害が起きて見えなくなるのが黄斑症です。全く見えなくなるのではないのですが、見ようと思ったところが見えないという状態が起こってきます。
【黄斑浮腫と治療について】
 正常な眼の中の神経膜が網膜で、その網膜がだんだん水膨れのようになって腫れてきて、感度が落ちてしまう状態です。

 黄斑浮腫の治療としては光凝固です。網膜のサイトカインを落とすか、直接水が漏れてくるところを焼き潰して、水が漏れないようにする治療が、以前から行われていました。

 また眼の中に分泌されたサイトカイン自体が神経の膜を張らしているので、これも手術で取り除けば浮腫が減るのではないかと、手術が行われるようになりました。そして血圧が高いと漏れてくる量が多くなるので、血圧をコントロールしようという方法もあります。
@新しく出て来た方法

 今までの方法はやはり侵襲的に視細胞を潰してしまうので、網膜の中心の真ん中がやられた場合、真ん中が見えなくなってしまいます。それに比較して抗VEGF薬治療は、薬によってVEGF(血管内皮細胞増殖因子)、サイトカインの働きを抑えてしまおうという治療です。

 これは網膜そのものを障害することなく、浮腫の原因になるところが取れるので、最近はこういう治療が行われるようになっています。レーザーで焼いたところは、光を感じ難くなってしまうので真ん中は焼けません。

 その後に行われてきたのが、トリアムシノロンテノン嚢下注射です。これはステロイドですが、サイトカインの働きは元々炎症が関与しているだろうというところから、それを抑えてしまうことで、注射をすると、腫れが引いて視力が上がるという治療を行うこともありました。

 ただしステロイドなので、副作用があり、薬が2〜3ヶ月経つと代謝されてしまって、また腫れてくるということの繰り返しが割とあります。
A抗VEGF薬治療

 今新しく行われているのが、この(2015年)2月から認可が下りたのですが、直接浮腫の原因になっているであろうVEGFを、眼の中に注射することで浮腫を抑えるという治療です。元々黄斑変性に行われていた治療ですが、最近では糖尿病の黄斑浮腫に対してもおこなわれるようになっています。

 最初は1ヶ月毎ぐらいに3回注射をしておいてから、あとは悪くなったら打つということで経過を診るという方法になります。光凝固と比較すると、字を読む速度が光凝固ではレーザーをしてもあまりよくならなかったという報告だったのが、この抗VEGFを注射することによって文字を読む速度がぐんとよくなるという、かなりの優位差が出ています。最近では光凝固せずに注射だけで良いのではないかという意見が多く出ています。

 糖尿病網膜症の治療のポイントは、先ほどと同じ早期発見、早期治療。悪くなってしまってからではなかなか戻りません。単純型のときに見つけて、血糖のコントロールを徹底的に行えば、それ以上進行しません。いったん悪くなっていても、そこから回復することもあるので、やはり早期発見、早期治療が必要になります。

 何も症状が無い。血糖のコントロールがいいと言っても、半年から1年に1回ぐらいは糖尿病があると言われた時点で、継続して眼科受診をすることが必要であると思います。
NEXT  BACK


Copyright(C) 2017-2018 網膜剥離って何? All rights reserved.