黄斑疾患の特殊性と新治療の可能性2

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加齢黄斑変性
 次に加齢黄斑変性です。これは最近マスコミでもよく取り上げられている病気なので、いろいろな所で耳にされると思います。日本人にも急激に増えているといわれていますが、欧米ではこの病気が失明原因の第1位です。日本の第1位は緑内障、2位は糖尿病網膜症で、加齢黄斑変性は4位か5位だと思いますが、急増していまして、10年、20年たつとこの病気が欧米と同じに1位になるかもしれません。

 どういう病気かといいますと、網膜の真ん中の黄斑部で、網膜の下の脈絡膜から異常血管が生えてきて、そのために視力が落ちるというものです。初期はものが歪んで見えるといった症状が多いのですが、進行すると真ん中が見えにくくなってきます。全身的には、高血圧や動脈硬化を持っている患者さんに多い傾向があります。

 これがこの病気の患者さんの眼底写真ですが、脈絡膜から異常な血管が生えてきて、それが出血を起こすのです。それが黄斑部で起こりますから、視力にとって最も大切な部分がやられてしまいます。周囲は見えているのに、見ようとする所が見えないということになり、文字も読めなくなります。

 しかも両眼におこることが多いので、患者さんにとっては非常に深刻です。治療法としては、大きく分けて3つあります。まず光線力学療法は、特殊な増感剤を注射して、弱いレーザーを照射するという方法で、これは一時盛んに行われました。最近は抗VEGF療法といって、異常な血管を縮小させる薬剤を眼に注射する方法が一番多く行われています。出血が多い場合には、硝子体手術も使います。今ではこの3つがメインの治療法だと思います。

 光線力学療法とはどういうものかといいますと、まず光感受性物質を注射します。すると異常血管の所にその物質が取り込まれますので、そこに弱いレーザーを打つのです。弱いレーザーを打って、この血管を閉塞させようというわけです。なぜこういうことをするかというと、網膜の真ん中の部分は視力にとって大切な場所です。

 そこにいきなり通常のレーザーを打つと、大事な網膜を障害してしまいます。そこで網膜にはできるだけ障害を与えないようにと開発された治療法です。弱いレーザーで、異常血管だけを選択的にレーザーで焼くのですが、やはり限界があって、正常網膜もある程度ダメージをうけてしまいます。

 また、この治療法の欠点は、光増感剤を注射しますから、治療後しばらく直射日光を浴びることができないことです。蛍光灯の光くらいは大丈夫ですが、直射日光を浴びると皮膚に残っている増感剤が反応して火傷をしてしまいます。特に初回は入院していただいて、2日程度外に出ないようにしていただくことが多いです。2回目からは服装の注意をしっかり守っていただければ、通院でもOKということになっています。

 次に新しい薬物療法として、抗VEGF療法という治療があります。VEGFというのは、Vascular Endothelial Growth Factor(血管内皮増殖因子)の略で、眼の中に異常な血管をおこす、一番の悪役とも言える化学物質です。体の中にもともとある物質ですが、これが病的に増えてきて異常血管を生やすのです。

 この物質に対する抗体を作用させ、その働きを抑えようという治療法で、これが現在最も広く行われています。最近はマクジェンとルセンティスという薬が保険適応になっていて、後者を使うことが多いようです。この薬は2006年にアメリカで承認され、2009年から日本でも使用できるようになりました。

 どのように投与するかといいますと、注射針で硝子体中に入れるのですが、網膜の前方、レンズの周辺部分である毛様体扁平部から、細い針を入れて注入します。これは通院でできる治療です。これがルセンティスを投与する前の写真です。

 それが注射によって次の写真のようによくなっています。ただし先ほどの光線力学療法にしても、この抗VEGF療法にしても、しばしば再発します。このルセンティスに関しては、非常に高価な薬の上に何度も注射するので、医療費が高くなるといった問題があります。

 また一定の頻度で感染の危険もありますし、脳梗塞をされた方はこの薬を使ってはいけないということになっています。さらに長期的には予後がどうなるか、まだはっきり分かっていません。一年後位は非常に良いのですが、3年、4年とみていますと、再発することが珍しくありません。当初期待されていたほどの成績は得られていないような感じです。

糖尿病性黄斑浮腫
 最後に糖尿病性黄斑浮腫についてご説明します。この病気は糖尿病網膜症の一つの病型なのですが、網膜の真ん中に水ぶくれがおこるもので、近年日本でも増加傾向にあります。網膜の血管が糖尿病によって傷むと、血漿という血液の水成分が血管外に出てきます。

 特に網膜の真ん中に起こりやすく、このように網膜が倍くらいに膨れ上がり、そのため非常に見えにくくなってしまいます。どのような治療をするかというと、毛細血管瘤という血管のコブがあって、そこから水が漏れだしている場合には、そのコブに対してレーザーを照射するのが、一般的です。

 他には薬物療法としてステロイドという薬を眼に注射することがあります。糖尿病網膜症は炎症が関与していると言われていますが、ステロイドは炎症をおさえる強力な薬です。また手術で硝子体をとることで、水ぶくれを減らすという方法もあります。

 この病気には全身管理が大切で、血圧が高い方、あるいは腎症を併発している方は、これらをきちんと治療することによってよくなることもあります。糖尿病黄斑浮腫に対してはいろいろな治療法がありますが、未だにどれも100%満足できるものではありません。

 さらに治療成績を向上させるためには、新しい発想をもって新たな治療法を開発していかなければならないと思っています。そのため支援費をいただいて、この病気についていろいろ研究させていただきました。それについてはまた後ほど、お話させていただきます。

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