網膜剥離の病態と最新治療法(2)

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【治療法】
 
 治療法はいろいろあります。経過を見て自然に治るかというと、裂孔原性網膜剥離に効く薬はなく手術となります。

 手術には冷凍凝固とかレーザーとかありますが、網膜裂孔といって孔が開いただけで、網膜が剥がれていなければ、有効です。しかし剥離しているとなるとレーザーではやけませんし、冷凍凝固も効果がありません。いわゆるバックリング手術、経強膜手術乃至は硝子体手術が必要となります。従って裂孔原性網膜剥離は基本的には手術しないと治りません。

 1.バックリング手術

 シリコンでできたバックル材料を孔のある部分に外側から縫いつけますと、そこは内側に凹みますので、孔を通して水のような硝子体が中に入っていくのをブロックするわけです。それは同時に眼球の容積が縮小することになります。

 元来眼球はほぼ球形をしていて、表面積が最小で最大の容積をもっているものですから、これを歪めてしまうと、体積が減り、容積が縮小して眼圧が上昇します。

 使われる材料は6mmのソリッドシリコンのM220とか277などです。その外いくつかありますが術者に依る好みもあります。それからシリコンのスポンジ、5mmとか7.5mmなどです。基本的に周辺部の孔に関しては、ソリツド(硬い)のシリコン、棒状もしくはバンド状のもの、シリコンタイヤといいますが、こういったものを使います。深めの孔に関してはシリコンのスポンジを縦方向に縫いつけるといったことをやります。
 
(ビデオでの説明)
 
 結膜を360度切っていきます。直筋の部分に糸をかけて、眼底を見て孔を捜して、糸をかけ、スポンジを縫いつけていきます。孔の上にスポンジが載っていることを確認して終わります。次は横方向にある場合です。

 強膜は1mmか、1.5mmぐらいの厚さしかないので、半分ぐらいの深さで糸をかけています。透明なシリコンのストリップをおいて締めていきます。真ん中に細いバンドがあるのは、全周をまく輪状締結術も一緒に行なっているからです。

 ここで網膜の下にたまった廃液を抜くのですが、基本的にはバックルの下で針を刺して抜くのが合併症が少ないとされています。電気分解針といいますが、針を使って液を抜いていきます。

 それ以外に強膜を切開して、出血がないようにジアテルミーで穿刺して抜くという方法もあります。網膜の下にたまった液を抜くのは、眼圧の上昇を防ぐためでもあるし、早く網膜を復位させるためでもあります。急激な出血の予防、急激な眼球の虚脱を防ぐためにバックルを載せると、排液の速度が弱まるなどのことがあります。

 大量に水があった場合には裂孔が閉鎖されないといったことが起こります。その場合にはBSS(眼内に入れるバランスソフトソリューションという液)つまり目の中に入れても差し支えない特別の水なので、これを入れて、網膜下の液を抜くとか、ガスを入れるとか、特殊なSSFIXというガスを入れること等があります。

 基本的に手術が終わった時、すべての裂孔がバックが乗っていて、そのバックル上で裂孔が閉鎖されているという状態になります。裂孔の下以外に、網膜下液が多少残っていたとしてもそれは自然に吸収されるはずです。そして眼圧は正常範囲になっているということです。翌日から10日以内にバックル上に載った閉鎖裂孔を確認すれば、それで完了としています。
 
 2.硝子体手術
 硝子体手術は基本的には孔が深い位置にある場合に行われます。
中間型とか黄斑型といわれる場合です。それから55歳以上または白内障のある眼では、白内障手術を併用して比較的大きい眼内レンズを入れます。輪状締結術は行ないません。網膜下液はもともとあった孔から抜くようにしていますが、やむを得ず意図的に裂孔を作って抜く場合もあります。これはテクニカルな問題ですが、周辺側に孔があるとすると、それだけではどうしてもすべての下液は抜け切れないということがあります。

 それで意図的に穴を開けて抜きます。原則として20%のSSガスを最終的に入れます。
硝子体手術は眼球の強膜に3ヶ所に穴を開けます。1ヶ所は灌流液BSSを入れる孔です。二つ目は中を照らす照明用の孔、最後は硝子体カッターという硝子体を切除する道具を入れる孔で、それぞれ直径0.9mmミリ、約1mm弱の穴を開けて硝子体を取っていきます。

 もし網膜に膜があったりすると、その膜をブラピックという器具でひっかけてとります。最後に網膜裂孔から網膜下液を吸引しますが、そのままだと眼球がつぶれますから、出ていった分は、また入れるというように、眼圧を一定に保ちながら、下に溜まった水を吸引していきます。網膜がぴったりくっついたらレーザーで裂孔の周りを灼いて終わりにします。

 網膜はぴったりついていますが、中に入れた空気やガスはだんだん減ってきますので、手術後はうつ伏せになってもらって網膜をある程度押さえておく必要があります。
 
 以上でバックリングと硝子体手術を説明いたしましたが、私の基本的な方針では、まずバックリングを選択します。何故かといいますと、網膜剥離の85%は周辺部に裂孔があるからです。

 その外の場合、黄斑円孔、深部裂孔等の中間部型、白内障や眼内レンズが入っていて、眼底観察が難しい場合、増殖硝子体網膜症、膜などができてしまったものに対しては硝子体手術をするという選択を行っています。

 何故バックリングなのかといいますと、自治医大時代の例なのですが全部で400のデータを見ますと、初回復位率はバックリングで98%なのに、硝子体手術は87%と悪いのです。これは硝子体手術は術者によって結果に差があるからです。

 硝子体手術者は私ともう一人でした。私のみのデータはバックリング手術とほとんど変わらない98%とでています。術者によって、こんなに差の出る硝子体手術ですが、患者さんが受けるとき、だれが上手かはあまりよくわかりませんから、一般的な話としてこうなるわけです。最終復位率は99.7%ですから最終的にはほぼ治っています。

 バックリング手術と硝子体手術で黄斑部が剥がれて視力が0.1以下の場合を集めてみると、復位後はどちらも0.4と差がない。つまり術後視力にはそんなに遜色がない、所要時間はバックリング手術で1時間弱、硝子体手術だと80分、上手な人だともっと短くできるかもしれない。しかし白内障手術をともにしたり、ていねいに硝子体周辺部を取ったりするとこのくらいの時間は必要でしょう。

 初回復位率はバックリングの方がよく、再手術になった時、ガス注入とか、バックル追加とか、硝子体手術とか、選択の幅がバツクリング手術にはいくつかありますが、硝子体手術の再手術は、硝子体手術で行うしかありません。

 眼内レンズを入れた硝子体手術の再手術は、治っていないために炎症が多かったりして、視認性が不良なことが多く、散瞳も悪くなってしまいます。だから硝子体手術は1回で治さないとむずかしいものがありますので、バックリングを選択しています。

 光凝固を用いた二段階網膜剥離手術は、手術の中ではマイナーな手術法ではありますが、私はあえてこの方法をやっています。一つは第一段階は手術によって裂孔の一時的閉鎖を行う、バックルを置いて網膜下液を排出することによって裂孔は一時的に閉鎖される、これができれば網膜剥離は治るわけです。その上で閉鎖が永続するために裂孔周囲の光凝固処理を行います。わかりやすい術式で手術時間の短縮につながり、冷凍凝固に比べると網膜色素上皮の侵襲が少ない可能性もあります。それはまた増殖硝子体網膜症を起こす可能性が少ないということにもつながるので、この二段階方式がいいのではないかと思います。また多くの例で術後光凝固の追加が必要なので、手術時に凝固操作を行う必要があるのかという疑問が私にはあります。

 もう一つのよい点は二段階に分けることにより手術の問題点が明らかになることです。バックリング手術で基本的には網膜が完全復位し、裂孔が閉じるはずなので、レーザーで凝固ができないということは、裂孔が手術できちんと閉鎖されていないことになり、手術に問題があったということになります。裂孔が閉鎖されたのに網膜の下液が残っている場合があります。これはどこかにある裂孔を見つけなかった、裂孔が残っていた所為だ、ということにもなります。

 二段階に分けるとこのように自分の手術の問題点が明らかになるのではないかと思っています。
 
伊野田眼科クリニック
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