加齢黄斑変性(2)

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光線力学的療法PDT

 レーザーを使うことは同じですが、網膜に障害を与えないようにと考えられた治療です。網膜の下にある新生血管だけを治療したいということです。この治療の特徴は、光感受性物質を使うことですが、この物質は二つの特徴を持っています。実際の治療では、これを血管に注射して投与しますので全身にまわるわけですが、新生血管にだけ取り込まれるという性質を持っています。もう一つの特徴は、ある特定の波長の光があたると活性酸素を放出するというものです。 

 ということは、この物質を注射して、脈絡膜の新生血管に到着する頃を見計らって特定の光を照射すると、光感受性物質から活性酸素が放出されるということです。皆さんよくご存知だと思いますが、テレビでもみのもんたが「活性酸素は身体のいろいろなところで害になりますよ」と言っていましたが、活性酸素は、体にとっては有害なものです。しかしこの治療では、つぶしてしまいたいと思っている新生血管だけに特定して吸収され、やっつけてくれるというわけです。 

 具体的には、まず腕からこの物質を注射します。そして脈絡膜の新生血管に集まってきた頃を見計らって患部に活性酸素を発生させる特定の波長の光を照射するのです。悪い所を取り出すというわけではありませんから、このPDTの治療を行った直後は、患者さんも治療者側も何の変化も感じられません。 

 治療後に生ずる活性酸素が新生血管を退治してくれるのを待つというわけで、まどろっこしい治療法ともいえます。脈絡膜の新生血管が消退してくれれば、網膜のむくみがとれたり出血が防止されたりするのです。脈絡膜の上にある網膜にはほとんど影響を与えませんから、更なる視力の低下を回避したり、場合によっては視力の向上も期待するというわけです。 

 今回PDTで使用したのは「ベルテポルフィン」という光感受性物質です。ベルテポルフィンという物質はいろいろな波長の光を吸収するので、特に赤血球に含まれるヘモグロビンと重ならないような光のレーザーを使って治療をします。ところが太陽光にはこの波長の光が含まれているので、注射後に太陽光を浴びると、ベルテポルフィンは活性酸素を放出してしまいます。したがって注射したベルテポルフィンが体に残っている間は、日光にあたらないようにしなければいけません。これがこの治療の弱点ともいえるわけです。肝臓で5日間かけて代謝されるといわれているので、体から排出されるまでの5日間は太陽にあたらないようにします。 

 そのことから、日本ではこの治療を初めて受ける場合、48時間は必ず入院することになっています。この48時間で太陽にあたらない生活を覚えてもらって、同様な生活を5日間維持してもらうためです。具体的には、室内でも日中は厚い力ーテンをしてもらいます。ただ蛍光灯の光やテレビは大丈夫ですから、真っ暗な部屋にいなければならないということはありません。また、血管注射がもれたときのために、注射する部位は肘など太陽光から隠しやすい場所を選びます。 

 治療結果について、次に大塚眼科での3年間の治療経験をお話しましょう。
大塚眼科では平成16年の7月1日からこの治療を始めました。それから今(平成19年)の5月1日の時点で226眼の治療をしています。そのなかで1年経過している患者さんは、136眼、2年たっている患者さんが、72眼になりました。なかには、ご高齢で途中から来院できなくなった患者さんもいらっしゃいます。 

 それで今回は、1年間経過観察ができた136眼について治療成績をお話したいと思います。平均年齢は72歳、一番ご高齢の方は92歳でした。平均寿命は女性が長いのですが、この病気は圧倒的に男性が多く、日本だけではなく東洋人は、男性に多いといわれています。欧米人は女性が多いのですが。 

 この治療は1回でなおってくれればいいのですが、3ヶ月ごとに脈絡膜新生血管の活動性が残っていないか検査をして、もし残っているようでしたら再度治療をします。ですから3ヶ月ごとにこの評価を繰り返します。その結果最初の1年間で治療した平均の回数は、1.7回でした。日本でこの治療を行っている施設では大体このくらいのようです。 

 治療の効果があった患者さんを紹介します。
この患者さんは82歳の女性です。治療前の視力は0.1で治療後1年経過して0.4に回復しました。この写真は治療前の様子です。この部分に脈絡膜の新生血管があるのですが、そこから血液の成分が染み出してきています。網膜は、何とかその染み出しを吸収しようとするのですが、血液の成分の中にはコレステロールとか脂肪とか吸収しにくいものがあって、これらが沈着するとこのような黄色いプチプチとしたものになります。 

 造影剤を使って検査をすると、新生血管から血液の漏出があるのがわかります。網膜を横からながめると、正常では網膜の中心窩は凹んでいるのですが、それと比べると妙な腫れがありますし、この黒い部分は網膜の下に血液の成分が溜まっているのでしょう。それが治療後1年たつと、血液の漏出も減ってコレステロールなども吸収されてきます。黄色く残っていたものも随分減っています。 

 次の患者さんは0.2の視力が0.6になりました。ここにある白かったり赤かったりする新生血管、横からみるとぼこっと盛り上がって見えますが、レーザー後には回復しています。0.6という良い視力に回復したのは、ここに脈絡膜の新生血管の跡が残っているのですが、黄斑部の中心から少しずれているのです。視力の大切な場所からずれていたことが幸いしました。同じように治っていても真ん中にかけて跡が残っていたら十分な視力回復は望めません。 

 この跡がどこにおさまるかコントロールできるといいのですが、今のところそのすべはありません。この二人の患者さんは良い経過をたどった方で、残念ながら良くならなかった方もいらっしゃいます。この方は視力0.5が0.8になり、治療前にはおまんじゅうみたいだった水ぶくれが治療後にはなくなっています。これは1年後の状態ですが、2年後もこのままという保証はできません。加齢を基盤とした病気ですから、再発する可能性がないわけではありません。 

 この方は、視力0.06が0.1になりました。初めて来院されたときに、大きな脈絡膜の新生血管がありました。何度か治療して、1年後には落ち着き、腫れもおさまりました。しかしもともとの新生血管が大きかったので、傷跡も大きく、その部分に一致して視機能は失われ、視力回復は0.1までだったのです。 

 これはPDT治療を行った全部の患者さんについて、治療前と治療後3ヶ月、6ヶ月、1年後の視力の推移を示したものです。この数字は統計で用いるログマール視力といって特殊なものですが、絶対値が少ない方が良い視力です。したがって、このようにロクグマールの数字が減っているのは、視力が回復していることを意味しますので、確かに統計的には良くなっています。ただ患者さんの立場からみてみますと、0.1と0.2の間のことしか語っていませんから、0.1いくつかの話でしかないということになるのです。 

 良くはなっているのですが、患者さんが思われる「夢のような治療法」とはまだ随分遠いのが現実かもしれません。しかし治療する側からすると、症状が悪化した患者さんを、何もすることがなく見ているだけという光凝固しかなかった3年前に比べると、だいぶ進歩したと感じています。もちろん現状に満足しているわけではありません。

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