網膜剥離〜侵襲をへらす2

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【二つの手術】
 網膜剥離の手術の歴史を調べたのですけれども、これは海外の方が色々な手術の方法を考えられています。最初は1916年ということは100年くらい前になりますが、先が焼けている針を、眼に突き刺して、その孔の周りを焼き付けるという方法だったようです。その次に出てきたジアテルミーも、これによく似たようなものです。これも針を突き刺して電気凝固で、電気でジュッと焼き付けるというような方法です。この時には孔の周りを焼くという考え方しか無かったようです。

 更に時代を経ますと、エクソプラント法、プロンベ縫着法とあります。これが実は強膜バックリング、今行われているバックリングにほぼ近いものです。外側から眼球に物を縫い付けて内側へ押さえ込むという考えかたが出来たのが、1960年即ち大体五十年ぐらい前です。強膜バックリング手術ということに関してはあんまり変わっていないと言うか、一旦完成を見たと考えていいかと思います。

 硝子体手術は、1970年に考え出されて始まりました。それまでは硝子体を取るというようなことは、考えられなかったようです。最初は、非常に重症の糖尿病網膜症の方に、この手術を行なっていたのですが、網膜剥離の手術にも硝子体手術が使えるんじゃないかというふうになったのが、大体1985年ぐらいと言われていますので、大体30年ぐらい前になります。ですから強膜バックリング手術と硝子体手術は大体歴史が半分ぐらいしかありません。バックリング手術のほうが歴史としては古いということになります。

 この手術、どちらをするかというのが非常に難しいところで、今必ずどちらかでないといけないという場合もあるのですが、どちらを選んでも治療は可能である場合が実は非常に多いです。比較的強膜バックリング手術を選ぶことが多いのは若い方、先程の20代の方の網膜剥離、或は範囲が狭い場合、硝子体手術というのは、硝子体を取る手術になりますので、それが取りにくそうな場合は取らないで、外側からやります。

 硝子体手術を選ぶことが多いのは網膜剥離が広い範囲にあったりとか、孔が深かったりとか、孔が大きかったり、孔が沢山有ったり、或は中に出血を起こしているような場合などは、硝子体手術を選ぶことが多いです。実は現在は硝子体手術を選ぶということが段々多くなってきています。これは何故かと言いますと、後でもお話ししますが、手術の器械の改差星寸によりまして、硝子体手術が進歩してきているからともいえます。
【強膜バックリング手術】
 では最初に強膜バックリング手術という方法をお話しいたします。先程も言いましたように網膜剥離は網膜に硝子体が引っ張られて、孔が開いて後ろに水が廻っている病態です。そこで引っ張っている力を取るため、孔を閉じて後ろの水を抜くが手術の目標になります。

 眼の奥を観察してから、冷凍凝固と言いまして、孔のところを、先がマイナス70度ぐらいで凍る器械を外から押し当てて、外側の壁と網膜とを一体に焼き付けます。そして、シリコンのスポンジを眼球の外側から内側へ縫い付けて、内側に押さえ込むことによって引っ張る力をはずして、後ろに廻っている水を抜くという手順です。

 眼球を取り出して手術をする訳に行きませんので、手術でさわろうと思う場所によっては、眼球をかなり手前側に持って来ないといけないです。それを持って来るために、眼の筋肉を引っ張るような形に糸を掛けます。器械で眼を開けて、眼球を動かす筋肉を引っ張り出して来て、白い糸をこの筋肉に掛けるという状態になります。

 糸が四つ掛かっている状態になり、この糸を引っ張って来て処置をします。双眼倒像鏡という眼底を診る器械を用いまして、眼底を見ながら冷凍凝固の器械で網膜の孔の周囲部分を凍らせるという処置を行います。その後にシリコンのスポンジを縫い付けます。黒目のところからかなり奥の方にこれを縫い付けないといけませんので、この糸でグーッと眼を引っ張って、それで糸を縫い付けるという形になります。

 そのあとに、後ろに廻っている水を抜きます。切れ目を入れまして、針で外側から眼球の壁を突きまして、後ろの水を抜き出します。スポンジで上から孔を押さえつけて残っている水を外へ出すというのが、この手術の方法という形になります。

 例えば裂け目があって、網膜が剥がれているケースで、外側からスポンジを押し当てて、その周りをレーザー凝固(固めること)によって網膜にくっ付いて、隆起をしているのですが、網膜をくっ付けている形で手術が終わる訳です。
【硝子体手術】
 続きまして、硝子体手術についてお話しさせていただきます。硝子体手術を選択する要因というのは、基本的にバックリング手術ですが、外からやる手術が出来ない場合には、硝子体手術を選ばなくてはなりません。外側から押さえられない場合は何かと言うと、孔が沢山あったら押さえ切れません。或は奥の方にあったり、端っこの方にあったり、バラバラだったりした一個一個をシリコンスポンジで押さえるのが難しいからです。

 或は孔が大き過ぎると、シリコンスポンジの幅では孔が押さえ切れません。或は余りに奥にあると眼球を引っ張っても、そこまで処置が出来ないとき。或は引っ張る力が強いとき。これは引っ張る力が強いと外側から押さえ込むだけでは引っ張る力を押さえ切れないような場合。或はもう眼の中に膜が張っている、糖尿病の網膜症のような膜を張ってくる重症の網膜剥離の場合、中に入ってこの膜を取らないと網膜がくっ付きません。

 この様な状況になるのはしばしば、その網膜が一旦手術したけれどまた剥がれてきたというケースに多いので、硝子体手術になります。大きな裂孔、大きく裂けてしまって網膜側が反転、ひっくり返るような形になっている状態。非常に大きな孔で、全部裂け目になって大きな孔になってしまうと、外側からのスポンジで押さえつけるということが難しくなってしまいます。

 或は先程の増殖膜、膜が張ってしまい、網膜が引っ張られて、厳のようになった状態。この様な場合には外側からのバックリング手術等は治療が難しいので、硝子体手術ということになります。

 硝子体が縮んできて、引っ張ることによって網膜が裂けているような状態になっています。
硝子体手術では引っ張っている硝子体自体を、硝子体カッターという器械を使って取り去ります。硝子体はゲル状のものと言いましたが、そのまんま吸引するだけでは、網膜にくっ付いている部分だけを引っ張ってしまって、網膜を一緒に剥がしてしまいますので、細かくカッターの口のところで、切り刻みながら少しずつ吸い出すことが、必要になります。

 そのための硝子体カッターという器械を用いて、切り刻みながら吸い出します。暗い眼内を覗き込んで手術をしないといけませんので、眼底を照らす照明がついています。これで硝子体を取っていくのですが、ひとつ問題になってくるのは硝子体というのはくっ付いて外れないところがあることです。

 硝子体を取ると言いましても、全部取ることは物理的に不可能なので、全部は取りきれません。必ず端の方に残ってしまいます。この残った硝子体がしばしば網膜を引っ張ってきて、網膜にまた新たな孔を開けてしまということが起こる場合もあります。ですから出来るだけこの硝子体の残りを少なくするというのが、網膜剥離の再発を防ぐ大事な要素ではないかと思われています。その硝子体の残った物があればあるほど、網膜をまた剥がしてしまう危険があるということが言えます。

 孔の部分をきっちり取りまして、レーザーで網膜をくっ付けます。硝子体を全部取って、厳密に言いますと、水に置き換えているのですが、最後にその中に空気を入れて、ちょうど風船を内側から膨らますように網膜を外側へ、空気の力によって押し当てます。ですから、手術が終わった時点では網膜はくっ付いていますので、孔のところもレーザーが可能になります。空気を入れてレーザーで周りを固めるというのが、硝子体手術になります。それにはまず眼の中に器械を入れないといけませんので、その穴を何力所か作ります。

 それから硝子体を切るのに、硝子体を出来るだけ沢山しっかりと残らないように取るということが大事なので、そのために色々工夫をしながら硝子体を取ります。先程の空気に入れ替えて、レーザーで押さえます。特殊なガス、またはシリコンオイル。これはケース・バイ・ケースで使い分けはありますが、このガスというのは、普通の空気とは違ってちょっと膨張するガスで、少し吸収が遅いようなガスを入れ、網膜を押さえつけようとします。

 この網膜の硝子体手術をするためには三つの穴が必要になります。硝子体カッター、中を照らす照明、もう一個は吸い出すだけだといけませんので、中に水を送り込む、そのための穴というのが必要になります。その計3ケ所が必要です。器械から水が出て来るような形になります。まず水を送り込む穴を1個作ります。他に2ケ所穴を作りまして、その各々の所から照明とカッターが入って来るという形になります。

 硝子体自体が透明なので、網膜の破れ目が分かり難いのですが、くっ付いている硝子体をカッターで切りながら吸い出していきます。まず眼球にレンズを載せて拡大して見ます。

 眼球の端の方は、直接はそのレンズでは見えないので、ちょっとこちら側から、手で圧迫をしまして、器械で外から押さえ付けて、端の方に残っている硝子体を出来るだけきれいに取ります。その後に水に替わっている状態の硝子体の中に空気を入れまして、風船を膨らますようにして押さえつけてレーザーで孔の周りを焼き付けるということになります。

 今お話ししたバックリング手術と硝子体手術の二つがありますけども、各々の良い所悪い所が言われています。バックリング手術の長所としましては、眼の中は触りませんから、硝子体・水晶体には影響がありません。ところが硝子体手術で必要になるガスを入れたら、うつむきが必要になるのですが、それが要らないことです。

 その代わりバックリング手術の短所、問題点は、眼球はグーッと引っ張りますので、やはり痛みが出やすいということ。また奥にあるような孔はなかなか対応し難いです。中は触らないのですが、外側にスポンジを縫い付ける事によって眼球のかたちが凹んでしまいますので、それによって眼の循環障害が起こったり、屈折異常、乱視が強くなったりします。或はスポンジのせいで、眼の動きが障害されるというようなことが起こる可能性があります。

 逆に硝子体手術をすることによる長所と短所を挙げてみますと、痛みが少ないのは長所です。眼球を引っ張らず中に器械を入れるだけですから、眼球を引っ張ることが少ないので、痛みがそんなに起こりません。それから、硝子体自体を直接見ながら切っているので、網膜を引っ張っている硝子体自体の力を除去することができます。

 中をくまなく観察することによって他に孔が無いかということも、しっかり確認ができます。ガスで網膜を無理やり押さえつけますので、逆に言うと網膜が早くにくっ付きます。ですから早くくっ付くとその分治りが早いというようなことが考えられます。その結果視力の戻りも早いのではと言われています。

 短所は硝子体が取りきれませんから、取り残した硝子体が残る可能性があります。それが引っ張りまして、また新たに裂孔を作るという危険性があるということ。それから硝子体を取ってしまっているが故に、今度もう一回剥がれてしまうと、中には何もおさえるものがありませんから、急激に全部剥がれて、むしろ再剥離を起こした時には、硝子体手術の後のほうが難治性になることが多いです。

 それから、術きをしてもらう。それも一週間程ずっと傭きをしてもらわなければいけない。これが患者さんの負担としては大きいと言われています。このような問題があり、その問題を踏まえながらどちらの手術を選択するかということが今現在行われています。

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